大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「如何にも田舎の平和ボケした小国の姫様って感じだよな。
国のために身を犠牲にする者がいるのは、当たり前のことなんだよ。それが王族だろうが、貴族だろうが、そういう役目を持った者は、国のためにそれを受け入れるしかねーんだよ」

「ローザン国王と女王はこのことを知ってるの?」

「そりゃそーだろ。あの2人はオレの両親でもあるんだからな」

「女王はあなたがこの世に生まれていないことにされて、抵抗しなかったの?」

だって、お腹を痛めて生んだ愛しいわが子のはずだ。
その内の1人を、国のために人としての存在を隠していないことにするだなんて。そんなことがどうしてできようか。

「あんた、本当に幸せボケしてるんだな」

影は呆れた。

「一国を治める者が、国のことより我が子のことを考えて優先させるわけねーじゃん」

さも当たり前のように言う。

「そんな…」

「ラミリアがどうかは知らねーけど、ローザンは宝石類の埋蔵量が多い大国だからな。その王位ともなれば、命狙われても不思議はない立場だ。
一卵性の双子って言ったら、これ以上の影武者がいるか?利用して当然だろ?それが、この国の常識なんだよ」

思考も常識も根本的に違う。
そう悟ったミトは、無言になるしかなかった。

「で、あんたの部屋に来るのに危険はないわけだが」

影が説明を続けても、ミトは呆然としたままだ。

「おい、聞いてるのかよ」

「え、ええ…」

「第一王妃のユフィーリオ以外は、影の方が対応することになってるんだよ」

「は?」

ちゃんと聞いていたが、意味がわからずまぬけな声を出すミト。
また、わけのわからないことを影が言い出した。
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