大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
しばらくすると、サキに声をかけられた。

「ミト様、申し訳ありません」

読書に没頭していたミトは顔を上げた。

「どうしたの?」

「セルファ様がこれからこちらにいらっしゃいます。申し訳ありませんが、ミト様には一度退室していただかなければならないのですが…」

本当に申し訳なさそうな顔をしてサキは言った。

「集中されているところを心苦しいのですが、王と王子が利用される時は、他の者は例外なく退室しなければならない決まりなのです」

「あ、そうなの?じゃあ、いきましょうか」

ミトはあっさり頷いた。

(セキュリティの問題なのかな?)

「申し訳ありません」

何度も頭を下げるサキ。

「そんな、全然気にしないで。また来ればいいだけですもの。時間はたっぷりあるんだし」

ミトは明るく言った。

「ところで、今何時くらいかしら?」

「11時25分でございます」

「あ、もうそんな時間?」

夢中で本を読んでいる内に、あっという間に1時間経っていたようだ。

「じゃあ、一度別邸に帰りましょうか。お腹すいちゃうもんね」

「私などにお気遣いなく、ミト様の自由にされてください」

「あはは。ありがと。でも、お腹すいてきたから帰ることにするわ」

そんなことを話しながら図書館を出ると、こちらへ歩いてくるセルファの姿が見えた。

(影じゃなくてセルファだわ。なんか、久しぶりに目撃したかも)

なぜか遠くからでもわかってしまうミト。
セルファは護衛の兵士3人とセイラムを引き連れていた。
セルファがミトに気付く。

「あ、目が合っちゃった」

なぜだか緊張した。
セルファは穏やかに微笑して少しだけ歩みを速め、ミトの前で立ち止まった。
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