悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
4.夕食会の主役
そしていよいよ夕食会の時間がやってきた。
8時間みっちりロイと練習をしてきたので一応ちゃんとした舞にはなっているはずだ。
もちろん素人の舞であることは変わりないが。
「おお、ステラ。待っていたぞ」
食堂の一番奥の席で皇帝陛下が食堂へ入ってきた私を嬉しそうに見つめる。
私はそんな陛下を始め、ここにいる皇族の皆様に礼儀正しく深々と頭を下げた。
それから顔を上げて全員が座っている位置をざっと確認する。
左奥から皇后、2人の皇子たち、そして右奥からロイ、リタだ。
私は今からこの皇族の皆様全員の前で素人の舞を披露しなげればならないのだ。
頭が痛くなってきた。
「…ステラと申します。よろしくお願いいたします」
フランドル夫人が用意してくれていた黄緑とピンクと白の踊り子の衣装に身を包み、私はもう一度皇族の皆様に頭を下げた。
リタにこんなにもしっかりと見られては正体がバレそうなものだが、顔半分を踊り子の衣装で隠し、さらには認識齟齬の魔法薬を使用しているので、今のところは私の正体にリタも全く気づいていないようだ。
おそらく大丈夫だろう。
「それではステラ、始めてくれ」
「はい」
陛下の合図によって私は舞のスタートのポーズをとる。
それを確認した宮殿の使用人はこの食堂に予め用意していた音楽を流し始めた。