悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
ゆったりとした明るいピアノを主旋律にした音楽がこの食堂に流れる。
まるで蝶が舞を舞っているような優雅さと愛らしさを感じさせる音楽だ。
その音楽に合わせ私は舞いながら所々で袖や服に仕込んでいた魔法薬をふわりと撒いた。
その魔法薬は花びらと蝶の幻覚を見せるもので、舞う私の周りを花びらと蝶がひらひらと舞い、まるで私と花びらと蝶が戯れているように見せた。
私が舞ったのはたった数分だった。
音楽が止まるのと同時に動きを止める。
ようやくこの大一番が終わったのだ。
「素晴らしい!」
私が舞い終えるとまず最初に陛下がそう感動したように声を上げて拍手をする。
するとそれを待っていましたと言わんばかりに食堂中が割れんばかりの拍手に包まれた。
せ、成功した?
やっと余裕ができ、皇族の皆様を見ればみんな笑顔で私に拍手をしている。
よかった…。
素人の舞でもとりあえず許してもらえた…。
安堵している私に陛下は満足げに「本当に踊り子ではないのか?素人とは思えぬ舞だったぞ。やはりロイの目は確かだということか」と言っていた。
本当に陛下に満足していただけてよかった。