悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…ありがとうございます。ロイ様のお陰です」
私はこちらに歩いてくるロイに何とかにこやかな笑顔を浮かべてお礼を言った。
この状況を作った元凶はロイだが、今日の舞が成功したのもロイのお陰だ。お礼くらいは言わないと。
そんな私にロイは「いいや。僕はお礼を言われるようなことはしていないよ。とても楽しかったしね」と美しい笑みを浮かべ何故か私が座っているソファに腰を下ろした。
…長居するつもりだ。
「ん?何かな?その顔は?」
「…いえ、皇太子様が急に隣に来られたので緊張してしまって」
「君がそんなたまかい?」
ほんの少しだけ嫌そうにロイを見ていたことがロイにバレ、私は取り繕うように笑う。
するとロイはそんな私をおかしそうに見た。
す、鋭い。
これ以上私の感情を悟られないように私は「そんなたまなんです。私はただの平民ですから」と言ってロイから視線を逸らした。