悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「あはは。ちょっと意地悪をしすぎたかな?ごめんごめん」
「…別に謝っていただかなくても結構です。怒っていませんので」
未だに楽しそうに笑っているロイの声が私の耳に届く。
見なくてもきっとその美しい顔に意地の悪い笑みを浮かべていることがわかる。
元々いい性格ではないと思っていたが、ステラの私と関わる時のロイはリタの代役時の時よりも意地悪でよく笑う。これがロイの本来の姿なのかもしれない。
何も持たない平民相手だからこそ、取り繕う必要がないのだろう。
「ステラ、機嫌を直して。明日は宮殿の中庭で苺のお茶会をしよう。宮殿の為だけに作られた苺をふんだんに使ったデザートをたくさん用意させるよ」
「いいです。明日にはもう帰りますから」
「でも帰るまで時間はたっぷりあるはずだよ?苺をふんだんに使用したショートケーキにタルト、ゼリーにパフェ、それからプリンもあったかな?」
「…」
ロイが笑顔で言っている苺を使ったメニューたちが私の頭の中にふわふわと浮かび始める。
ショートケーキもタルトもゼリーもパフェもプリンも全部美味しそうだ。
正直めちゃくちゃ食べたい。
そこにクッキーとか紅茶とかあるのだろうか。レアチーズケーキも欲しいところだ。
…いやいやいや。
ダメダメ。
あんまりロイと一緒にいるとボロが出る可能性がある。
鋭いロイのことだ。小さな違和感から何か勘付かれてしまう可能性だって十分にあり得る。