悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「ステラはリタのことを気にして僕の誘いを断ったんだよね?どう?もう誘いを断る理由はないんじゃない?」
「…いえ。それでも明日は早く帰るのでどちらにしても無理ですから」
「そう…。それは残念だね。明日の為にもうシェフたちが奮ってデザートの下準備をしていたんだけどそれも無駄になってしまったね」
「…宮殿内にいる方で召し上がればよろしいかと」
「いいや。彼らは君が苺好きだと知って準備をしていたんだ。一番に食べてもらいたいのは君だと思うよ?」
「…」
宮殿のシェフを憐れむように瞳を伏せるロイに私は何とも言えない気持ちになる。
わかっている。これはロイが私の罪悪感を刺激しているのだと。
だが宮殿のシェフたちのことを思うと簡単には突っぱねられない。そして本当はとっても宮殿お抱えシェフの苺のデザートが食べたい。
「…わかりました。苺のお茶会参加させてください」
もう何を言っても無駄だろう。きっとロイの口車に乗せられて私はロイとの苺のお茶会に参加せざるを得ないのだ。
そう思った私はついに観念したように笑ってロイにそう答えた。
そしてそんな私をロイは満足げに見て「よかった。明日が楽しみだね」と柔らかく笑った。
…笑顔だけ天使のとんだ悪魔だ。