悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
5.それぞれの怒り
夕食会の次の日の午後。宮殿滞在最終日。
私はロイとの約束通り、宮殿の中庭でロイと2人で苺のお茶会を楽しんでいた。
まさか私が殺されかけた場所に戻り、しかも苺のお茶会をすることになるとは。
あの時は夢にも思わなかったがこれが現実である。
白を基調にした品のあるテーブルの上には昨日ロイが言っていた通りの苺のデザートがたくさん並べられており、私は密かに心躍っていた。
「どう?気に入った?」
大量の苺のデザートの中からまずはショートケーキを選び、食べている私をロイが優しく見つめる。
午後の日差しを受け今日もキラキラと輝く金髪の天使、ロイの後ろには、綺麗に整えられた木や花が生い茂っており、美しい絵でも観ているかのようだ。
今、目の前にいる天使のような男、ロイは私とこうして苺のお茶会をする為に、またこの3日間私と過ごす為にいろいろと無理をしているようだった。
何故私がロイの事情を知っているのか。
それは今朝、私の部屋に突然やって来た皇后がそう話していたからである。
皇后は優雅に微笑みながら、少しだけ面白そうに、
「ロイはよっぽどアナタと過ごしたかったみたいで、アナタとの時間を無理矢理作る為に、仕事を通常の倍の速さで終わらせて、この3日間急ぎの仕事以外は一切やっていなかったんですよ」
と言っていた。
皇后の言っていることが事実なら何故そうまでして私と過ごしたいのか疑問だ。
私を気に入っていることはわかるが、そこまでするほど気に入っているのか。
ちなみに皇后とは1時間ほどロイのこと以外にもいろいろな話をした。
どうやら皇后は昨晩の舞を見て、私と話をしてみたくなり、私の部屋を訪れたようだった。これも皇后が自ら言っていた。