悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「美味しいです、このショートケーキ」
「よかった。ほらこれ何かもおすすめだよ」
今朝の出来事を思い出しながらもショートケーキの感想を笑顔で私は口にする。
そんな私にロイは嬉しそうに微笑み、苺のタルトを私の方へ置いた。
ロイの行動により、私の視線が自然と苺のタルトの方へ向く。
苺のタルトの見た目は、クッキー生地のタルトの上に鮮やかな赤色の苺が所狭しと乗っており、苺好きの心をくすぐる見た目だ。
その下にはカスタードクリームがあるのだろうか。
とにかくとても美味しそうだ。
このショートケーキを食べ終えたら次はこの苺タルトを頂こう。
目の前の苺のデザートたちに夢中になりながらも私はロイと様々な他愛のない話をし、苺のお茶会を楽しんだ。
そしてロイとの苺のお茶会が始まって1時間くらいが過ぎた頃。
「ロイ様」
リタ付きのメイドがこの中庭に現れ、突然ロイの名前を呼んだ。
「…急に何かな?」
楽しい時間に水を差され、ほんの少しだけロイの雰囲気がピリつく。だがこのピリつきに気がつけるのは、相手のことをよく見ている敏感な人か、ロイとの付き合いが長い人くらいだろう。
そのくらいほんの少しのピリつきでぱっと見は人当たりのいい笑顔をロイは浮かべていた。