悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「汚いものは綺麗にしないと」



ポットを高く上げてリタが私の頭の上からザァーっと紅茶をかける。

やはりこうなってしまったか。

予想通りの展開に私は全く動じなかった。ただリタの怒りを収めさせるにこの展開を受け入れた。



「…リタ」



今の状況を甘んじて受け入れているとその声は突然聞こえてきた。



「ロイ様!」



自身の名前を呼んだロイにリタが嬉しそうに駆け寄る。



「ロイ様。お待ちしておりましたわ。私、とても寂しかったのですよ?本日の皇后教育も終わりましたのでこれから私と一緒に過ごしましょう?」



そしてリタはこちらにやって来たロイの腕に自身の腕を絡ませて甘えるようにロイを見た。

よかった。

リタの機嫌が治ったことに私は安堵する。

これでこの苺のお茶会もお開きだろう。
ロイはリタを人前では最低限婚約者として扱わなければならない。
もう私よりもリタを優先せざるを得ないはずだ。
ついでに去り際に2人の甘いやり取りでも見せつけられるかもしれない。

そう思いながらも何となくロイとリタを見ていたのだが、ロイの行動は私が予想していたものとは全く違った。




< 112 / 313 >

この作品をシェア

pagetop