悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「そこを何とかお願いできないか?一度会えば考えが変わるかもしれないだろ?」
「変わりません。クラーク隊長も俺の性格はよく知っているでしょう」
「…んー。あー。まあ、そうだよなぁ」
今日も何とか俺を説得しようとするクラーク隊長だが、俺はそれをキッパリと断る。
そんな俺の様子を見てクラーク隊長は少し考える素振りを見せた後、「…わかった。お前に無理強いはしない」と諦めたように笑った。
やっと今日も諦めてくれたか。
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そう思っていたのがつい数時間前である。
午前の騎士団勤務を終えた後、「今夜大事な話があるから我が家に来てくれないか」とクラーク隊長に言われたので、学院から帰宅後、俺はすぐにクラーク邸へと向かった。
そしてクラーク邸の者に案内された部屋には何故かあのクラーク隊長の娘がいた。
「ユリウス様…本日は我が家にお越しいただきありがとうございます」
見たことのない女性が、部屋に入ってきた俺に、ソファから立ち上がり、礼儀正しく一礼する。
全く知らない女性だったが、クラーク隊長と同じ燃えるような真っ赤な癖のある長い髪を見て、この女性がクラーク隊長の娘だということは何となく把握した。
髪以外あまり特徴のないクラーク隊長の娘が黒色の瞳を細めて嬉しそうに笑っている。
俺はクラーク隊長から大事な話があるからとここへ来たのだが、どうして娘の方がここにいるのだろうか。