悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…俺はクラーク隊長から話があると聞いてここへ来た。クラーク隊長はどちらに?」
微笑む娘のどこかまとわりつくような嫌な視線を受けながらも、俺は冷たく淡々と今の状況を確認する。
すると娘はおかしそうにクスクスと笑い始めた。
「…父は今、手が離せない案件に対応しております。ですので父が来るまでは私がユリウス様のお相手をいたしますわ」
何がそんなに面白いのか。
娘は怪訝そうにしている俺なんて気にも留めずに、本当に楽しそうに笑い、その笑みをさらに深める。
そして俺を上から下まで舐め回すように見ると「お座りください、ユリウス様」と俺をソファへ座るように促した。
だが、俺はソファの方へは行かなかった。
「わかった。ならばクラーク隊長の都合がいい時にまた伺おう」
娘に冷たくそう言い放ち、俺はこの部屋から出ようと、ドアノブに手をかける。
今日はまだ朝にほんの少ししかステラに会えていない。
一分一秒でも早く帰り、ステラに会いたい。
「待ってくださいな」
すると早く帰りたい俺を娘はねっとりとした声で止めた。