悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…お、おま、え」
娘に何か言おうと口を開くが、魔法薬が効き始めたようで、上手く喋ることができず、俺はその場に膝をつく。
「ふふふ。天才騎士様でも魔法薬には敵わないのですね」
そしてそんな俺に娘は嬉しそうにゆっくりと近づいてきた。
「大丈夫。ユリウス様のことはこれから一生私が面倒を見て差し上げますわ。ユリウス様はお強いですからまずはずっと痺れて思うように動けない魔法薬を使いましょうね?それでもきっと足りないでしょうから足首には鎖をつけましょう」
頬を薄桃に染め、恍惚とした表情で娘が俺を見つめて俺の頬に触れる。
「ああ、やっとこの手でユリウス様に触れられる。何と素敵なことなのでしょう。これからはずっとずぅと一緒ですよ?ユリウス様?」
俺にはもう反撃する力もない。
楽しそうに笑い続けるこの娘に俺は何もできない。
そのことが歯痒くて歯痒くて仕方がない。
ああ、クソ。やられた。
「うふふっ、あはははっ」
うっすらと意識がかすんでいく中、意識を手放す最後の時まで、ずっと楽しそうに笑う娘の声が俺の頭の中で響き続けた。