悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜

2.消えたユリウス




sideステラ



宮殿から戻って来て、1週間くらいが経った。
あれからロイから何かされる訳でもなく、穏やかな日常を過ごしていた私だが、ここ数日、何かがおかしい。

私は今、午後の授業の前の空き時間を使って、何となく公爵邸内の廊下を歩いていた。

…今日もユリウスの姿が見当たらない。

ここ数日、ユリウスが私の前に姿を現さない。
前までは嫌になるほど少しの時間でも私に会いに来ていたはずなのにそれがめっきりなくなった。
それどころか忙しいのか夕食の席にさえ現れないのだ。

何かがおかしい。

そう思って大きな窓から外を見るが、そこには美しい公爵邸の庭が広がっているだけでユリウスの姿はない。

私もどこかおかしい。
何故か無意識にユリウスを探す私がいる。
あまりにも日常に溶け込んでしまったユリウスという存在が急に消えて思うところがあるのだろうか。



「ユリウスの従者、ピエールによるとユリウスはそちらの家に向かってから行方がわからないらしい」



ふとどこからかフランドル公爵の真剣な声が聞こえてきた為、私はその場で足を止める。

ユリウスが行方不明?

てっきりいろいろと忙しく姿を見せないのだと思っていたが、どうやらそれは違ったらしい。
私は真相を確かめる為に声の聞こえた扉の方へこっそりと近づいた。




< 124 / 313 >

この作品をシェア

pagetop