悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




学院で調理実習があれば、その調理したものの中に惚れ薬を入れたり、媚薬を入れたりしてユリウスに渡そうとするということもあった。
その薬の類はとんでもなく強力らしく、アリスに実際に薬を盛られて倒れている生徒を何度見てきたことか。

幸い、ユリウスは他人から食べ物等を受け取らないたちなので、そういう被害には遭っていないようだった。

つまり、ハリー・クラークの娘である、アリス・クラークは非常に危険なユリウス信者なのだ。
そんなアリスの家に向かった後、行方不明になったとはもう嫌な予感しかしない。



「確かに俺はユリウスを我が家に呼びました。ですが、ユリウスはその後、きちんと我が家を出ております。この目で公爵邸の馬車が我が家を出ていく姿を見ております」

「…そうか。だか、その馬車でユリウスは帰って来なかったんだ」

「…なるほど。まさか道中でユリウスが襲撃を受け、馬車だけで帰らざるを得なかった、とか。その馬車を動かしていた使用人は何と言っているのですか?」

「それがそちらに行ってからこちらに帰ってくるまでの記憶が不思議なことにすっぽりと抜けていると主張するのだ」



ハリーと公爵の真剣な声の会話が続く。

従者は魔法薬を使われたのだろう。
一部の記憶だけすっぽりと抜けるなどそうでなければあり得ない。
この不自然さ、やはりアリスが関係しているような気がしてならない。




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