悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「それではステラ様…ステラ様?」



扉の向こうから異変に気づき、焦っている様子のジャンの声が聞こえる。



「ステラ様!どこに行かれたのですか!?ステラ様!」



そしてジャンは焦った様子のまま、私の思惑通りに私を探しにその場から離れていった。

よし。作戦成功だ。

外の状況を確認できたので、私はさっさと扉から離れて、とりあえず入ってみたこの部屋の物色を始める。

まずそんな私の目に入ってきたのは大きなハンガーラックだった。
そこには綺麗にクリーニングされているメイド服が所狭しとかけられており、それだけでここがメイドのクローゼットルームなのだとわかる。
私はそのままハンガーラックの元へ行き、自分のサイズに合いそうなメイド服を一着手に取った。

今の格好のままウロウロしても、ただ目立つだけで、あまり有力な情報は得られない可能性がある。
きっと毎日ここで働く使用人たちにしか気づけない小さな変化などがユリウスの行方に繋がるはずだ。
その情報を得る為にも、私自身も使用人の格好をしていた方がいいだろう。

私はそう考えると、今着ている上等なワンピースを脱ぎ捨てて、メイド服にすぐに袖を通した。
そして数分後、きちんと身なりを整えた私はこの部屋を後にした。

情報収集開始だ。





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