悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「そこで何をしているのですか?」
まさに今、扉に手をかけている私にクラーク邸のメイドが不思議そうにそう声をかける。
「…ア、アリス様のご命令でここへ来たのですが、扉が開かずに困っておりました」
私はそんなメイドに咄嗟にそれっぽい嘘を困った顔でついた。
お願い、何も悟らないで。
「貴女見ない顔ですね?新人さん?」
「…はい」
疑うような、真偽を確かめるようなメイドの視線が私に刺さる。
「そう…。ここはアリス様専用の地下室ですよ。ここにはこだわりの強いアリス様のコレクションの数々が保管され、飾られているんです。ここにはアリス様以外の者は立ち入ることさえ許されていないのですよ。ですから、ここへ来るように命じられた時はこの扉の前で待機せねばなりません」
しかしメイドの瞳からはすぐに疑念がなくなり、丁寧にこの扉の先について説明してくれた。