悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「それよりジャン。私、ユリウスの居場所わかったかもしれない」
「…っ!それは本当ですか?」
「うん」
私の真剣な表情を見て、ジャンの空気が変わる。
先ほどまでの幼い子どもを相手にしていた柔らかい空気とは違い、騎士のピリピリとした緊張感のある空気だ。
ジャンはその空気のまま、私の次の言葉を固唾を飲んで待った。
「ユリウスはアリス専用の地下室にいる可能性があるの」
「なっ!それが本当ならユリウス様は…」
「うん。多分監禁されてる」
私の言葉にジャンが信じられないといった様子で目を見開く。
まさかジャンもあのユリウスがここのご令嬢に監禁されているとは思いもしなかったのだろう。
私だってアリスのあの性格を知っていたからこそアリスを疑ったのだ。知らなければ疑いさえされなかったはずだ。
「ジャン。その剣貸して」
「え」
私はジャンからの答えなど待たずに、ジャンの腰に刺さっていた鞘から剣を引き抜いた。
ジャンが驚きに満ちた顔で私を見つめている。