悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「私がユリウスを助けに行くからジャンは人を集めて地下室に来て!」



私はそんなジャンなど無視して、その場から地下室の方へ走り出した。



「お待ちください!役割が逆です!」



後ろから必死に私を呼び止めるジャンの声が聞こえる。

私は子どもで相手は屈強なフランドルの騎士だ。このままでは追いつかれてしまうだろう。
そう思った私は一度その場で足を止め、ジャンの方へ振り返った。



「ジャン!よく聞きなさい!私は地下室がどこにあるか知っているわ!だけどアナタはその場所さえ知らないでしょう!?ならば知っている私が先にユリウスの元へ向かい、アナタは戦力を集めて地下室へ向かうべきだわ!あのユリウスを監禁しているかもしれないのよ!?地下室には何があるかわからないわ!今は一刻の猶予も許されないの!わかるかしら!」



私は高圧的にそう叫んで、緑の瞳をスッと細め、ジャンを見据える。



「一歩間違えれば大惨事になる。今は間違った選択は許されないのよ?」



そしてかつてリタだった時のように誰も逆らえない、女王のような雰囲気でジャンに静かにそう言った。




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