悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




ならばと私は頭を中で次の逃走ルートを考える。

ここはこのホテルの最上階、4階だ。
ここから地上まで飛び降りることは、自殺行為と同じだが、各部屋には立派なバルコニーがある。
そこに飛び移りながら下を目指すのはどうだろうか。今の私の身体能力ならいけるはずだ。

19歳の姿に戻り切ったので、もうあの苦しさもない。
私は元々用意していた最低限の荷物を握り締めると、ロイに背を向けてバルコニーの方へと走った。



「待て!リタ!」



後ろから私を必死に呼び止めるロイの声が聞こえる。
何故か私を先ほどからリタと呼ぶロイに、疑問を持ちながらも、私はバルコニーの扉に手をかけた。



「待ってくれ!僕はずっと君を!」



後ろからまだロイが必死に何かを言っている。それでも私は振り向くことなく、隣のバルコニーの手すりへと飛び移ると、そのまま斜め下のバルコニーへと飛び降りた。





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