悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
さすが帝国騎士団だ。
全く撒ける気がしない。森の中へ逃げ込めば、薄暗さや街よりも障害物がたくさんあるので、もしかしたら撒けるかも、とも思っていたが、なかなか実際は難しかった。
も、もう限界かもしれない。
ずっと動かし続けていた足ももう鉛のように重く、一歩一歩を出すことが辛い。
息もどんどん荒くなり、喉も異常に渇いてきた。
視界も心なしかぼんやりとしてきた気がする。
「…ぅ、…あ」
私から小さな声が漏れる。
先ほどまで力強く前へと出ていた一歩がもう出せない。
ふらふらとただ前に進むことしかできない。
ここまで何とか生き残ってきたのにもうダメなのか…。
ついに足が動かなくなり、私はその場で両膝をつく。
「どこにいらっしゃいますか!」
「返事をしてください!」
複数の男の人の声が遠くから聞こえる。
もう見つかるのも時間の問題だろう。
「…」
あれ。
突然、あんなにも聞こえていた男たちの声や足音が消え、この森に静寂が訪れる。
まるで誰もいないかのような静けさに私は違和感を覚えた。