悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「そんなに怖がらないで。俺はアナタの味方なのですから」
セスの細く白い指が私の頬を優しく撫でる。
壊れ物を扱うように慎重に慎重に触れるその指からは何故か敵意は感じられなかった。
おかしい。
セスは私を殺すはずなのに一向に私を殺そうとはしない。
反撃の隙を伺う私の頬をずっと撫で回している。
…ちょっと触りすぎな気がする。
私が嫌がらないことをいいことに好き勝手やっているぞ、セスは。
「…セスは本当に私の味方なの?」
私の頬を撫で続けるセスの手を止めて、懐疑的な視線をセスに向ける。
するとセスはその女性にも見える中性的な顔でふわりと笑った。
「当然です。俺はアナタの執事なのですよ?ここもルードヴィング伯爵家ではなく、俺の屋敷です」
「え」
セスの言葉に私は驚きで目を見開く。
ここはセスの屋敷なの?
セスの言っていることが正しければ状況が変わってくる。
セスが私を捕え連れてきた場所が、ルードヴィング伯爵家ではなく、セスの屋敷だったとしたら。
その理由はきっと…。