悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「…私を匿う為にここへ連れてきたの?」

「ええ」



おずおずとセスを見れば、セスは変わらず嬉しそうに笑う。
やっとわかってもらえた、とそんな表情をしている。



「俺はずっとアナタを殺すように言われたその日から俺のたった1人の主人であり、お嬢様であるステラ様を守る方法を探していました。だからこの屋敷も用意し、(きた)る日に向け、準備をしていたのです」

「…」



仄暗い笑みを浮かべ、光の一切ない空色の瞳が私をまっすぐ見据える。
セスの話はにわかに信じ難いが、だが、今はこの話をとりあえず聞き入れるしかない。



「ここに居ればアナタの命が脅かされることはありません。俺のお嬢様は俺がこの手で今度こそ必ず守ってみせます。ですからどうかずっとここで囚われていてください。大丈夫。アナタの心の準備もできるように両足の骨も折っておきました」

「え…」



何とかセスの話を聞いていた私だったが、両足の話をされて思わず表情をこわばらせる。

私の両足に感覚がないことは目覚めてから今までずっと違和感を覚えていたが、それがまさか私を守ると言った張本人の手によって折られていたとは。
それに心の準備とは何だ。その為に両足の骨を折るとはどういうことだ。



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