悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
今の状況に戸惑う私にセスが「ご安心してください。万が一、アナタが痛みに苦しむことのないよう、足の感覚を失う魔法薬を使っております」と笑顔でご丁寧に説明する。
だがそうではない。
私はそんなことを聞きたいのではない。
何故、私の両足を折る必要があったのか聞きたいのだ。
「…私は自分の身くらい自分で守れるよ。だからセスに匿われる必要は…」
「その足でどのように自分の身を守るのですか?」
「足はセスが折ったんでしょう?今は無理でも足さえ治れば…」
「では治るたびに折りましょう。そうすればアナタはどこへにも行けれません」
私が何かを言うたびにそれをセスがバッサリと否定し、おかしなことを言う。
そしてふふ、と嬉しそうに笑うセスのその目は全く笑っていなかった。
あんなにも美しい青空のような空色の瞳がまるで曇り空のように曇っている。
狂っている。
普通ではない。
「大丈夫。何度も何度も折っていればアナタも理解するはずです。ここが一番安全でアナタにとっての楽園なのだと」
そんな訳ないではないか、と今すぐにでも言いたかったが、私はその言葉を何とか飲み込んだ。
今、それを言うことはセスを刺激すると思ったからだ。
私の知っているセスはこんな人ではなかった。
いつも冷静沈着で落ち着きのある正しい人だった。