悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「美味しいですか?今日は南の離島から仕入れた海鮮でスープを作ったんですよ」

「うん。美味しいよ、さすがセスだね」

「よかった。では次はこちらを頂きましょう」

「…うん」



何とか笑顔で答えた私を嬉しそうに見つめ、セスはまた私の口元へと食事を運ぶ。
これを何度も何度も繰り返し、1時間もかけてやっと私は昼食を終わらせた。




*****




「それではステラ様、行って参ります。また夜には戻りますので」

「うん。仕事頑張って」



この部屋唯一の出口へと繋がる扉の前でセスが名残惜しそうに私を見つめ、丁寧に頭を下げる。
私はそんなセスに軽く手を振り、笑顔でその背中を見送った。

セスがルードウィング伯爵家へと仕事に行ったことにより、この広くも豪華な部屋で私は1人になる。

この部屋は本当に広く、とても豪華だ。
この部屋にはこの部屋だけで、一通りの生活ができるように机やソファや本棚などが揃えられており、出入り口ではないもう一つの扉の向こうには水回りまで完備されてあった。
しかも家具も一つ一つが高級品で洗練されたものしかない。

こんなにも素晴らしい部屋だが、この部屋には何と窓が一つもなかった。
なので私はもう3日も太陽の光を浴びていない。

太陽の光を浴びれない生活がこんなにも味気なく、気分が沈んでしまうものだったとは思いもしなかった。
今まで一度もこのような生活に追い込まれたことがなかったので、全く知らなかった感覚を私は今強制的に味わわされているところだ。



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