悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




「それでユリウス、驚かないで聞いて欲しいのだけど」



テーブルを挟んだ向こう側のソファに深く腰掛け、真剣な眼差しをこちらに向けるロイ殿下が、こちらの様子を窺うように口を開く。

俺は今、ステラ捜索の進捗をロイ殿下と確認し合う為に、宮殿のロイ殿下の執務室へと来ていた。



「まずは僕の婚約者、リタについてだが、あれには影武者がいた。そしてその影武者の正体がステラだ」

「は?」



突然、訳のわからないことを口にしたロイ殿下に俺は思わず、間の抜けた声を出す。
状況が飲み込めない。



「…ステラは12歳の子どもです。対するリタ嬢は18歳の大人だ。12歳の子どもがどうやってリタ嬢の影武者をするのですか。仮に魔法薬を使ったとしてもステラは幼いリタ嬢になることしかできないはずです。年齢を変える魔法薬などこの世には存在しませんから」



自分で今ロイ殿下に言われたことを改めて整理し、やはり、ロイ殿下が言ったことはおかしいと認識する。
どう考えてもロイ殿下の言っていることは不可能なことなのだ。



「その〝年齢を変える〟魔法薬があったとしたら?」

「…あるのですか」

「ああ。帝国一の魔法使いキースがそれを作ったんだよ。副作用を伴うまだまだ未熟なものだったけどね」

「…」



ふわりとこちらに微笑むロイ殿下を俺はじっと見つめる。
いつもと変わらぬ余裕を感じさせるその表情はどこか真剣で、嘘をついているようには見えなかった。



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