悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「正確には〝体の時間を戻す〟魔法薬をステラは飲んでいたんだ。本来のステラの年齢は19歳、リタの影武者もできる年齢だ。リタは魔法薬の力によって、僕たちの前では12歳の姿だったんだよ」
ロイ殿下の説明をとりあえず聞き入れた俺の中から新たな疑問が湧く。
ステラがリタ嬢の影武者だったことはわかった。
〝体の時間を戻す〟魔法薬を飲み、12歳の姿になっていたこともわかった。
だが、何故、ステラは12歳の姿になることを望んだのか。
そこまで考えて、俺はステラと初めて出会った日のことを思い出した。
ロイ殿下とリタ嬢の婚約式の夜。
三日月が浮かぶ濃紺の空の下。美しい宮殿の中庭で隠れるように倒れていたステラの横腹には刺し傷があった。
ステラはあの時、誰かに命を狙われ、相手の目をくらます為に、12歳の姿になることを選んだのではないか。
「…ステラは最初から訳ありの子どもでした。何者かに命を狙われている状況のようでした。ロイ殿下は何かステラについてご存じなのですか」
「ああ。全て調べたからね」
大切な存在の命に関わる問題。
それを知らないままでいいはずがない。
答えを求め、ロイ殿下を真剣な眼差しで見つめ続けると、ロイ殿下はそんな俺にゆっくりと口を開いた。