悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




「まずはステラの置かれている状況から詳しく説明しようか」



そしてロイ殿下は自身が知り得たステラの全てを俺に話始めた。




*****




「と、言う訳だ。だからこそステラは逃げなければならなかったし、魔法薬を飲んだんだよ」



わかりやすく全てを話し終えたロイ殿下は、机に置かれていたカップを手に取り口を付けた。

ロイ殿下から語られたステラの話はどれも信じ難い話だった。

ステラは孤児院出身で11歳という幼さでルードヴィング伯爵に買われ、契約をしたこと。
契約内容としてリタ嬢の影武者を務め、あの完璧なリタ嬢を作り上げていたこと。
ロイ殿下の婚約者の座を得ることが契約満了の条件であったこと。

そして契約満了した夜、ルードヴィング伯爵に裏切られ、殺されそうになり、あの魔法薬を口にしたこと。

ロイ殿下の話はどれも信じ難い話だったが、それでも俺は納得してしまった。
ステラを側で見てきたからこそ、納得できる所がたくさんあったからだ。

完璧なリタ嬢の影武者をしていたからこそ、貴族の礼儀作法等も難なくこなせていたし、剣術の腕も目を見張るものがあった。
いつもどこかでステラのことを聡明だったリタ嬢と重ねて見てしまっていたが、それもリタ嬢の影武者だったからだろう。

またフランドル邸から出たがっていた理由もわかった。
ステラはフランドル邸から出ようとしていたのではなく、ルードヴィング伯爵に見つからない場所へと逃げようとしていたのだ。




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