悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜

2.幸せの崩れる音 sideセス




sideセス



幸せだ。

少し前までの世界も悪くなかったが、今の世界はもっと素晴らしい。

さんさんと降り注ぐ太陽の光はまるで全てを祝福しているかのように心地よく、頬を優しく撫でる暖かい風はまるで誰かを愛し、愛される喜びを表現しているかのように優しいものだ。
世界に溢れるどれもこれもが美しく、素晴らしいものだと感じられる。
これも全てステラ様が俺という存在を認め、そばに置くことを決めてくれたからだった。

ステラ様の足が完治するまであと一ヶ月もないだろう。
ステラ様の足が万全の状態になり次第、ステラ様と共に帝国外へと行き、新たな生活を始める。
その為に必要な準備はたくさんあり、きっと準備をしてもしても仕切れないはずだ。

だからこそ今からでもできることをやっておく必要がある。
たださえ忙しい毎日だが、それに加えてステラ様との明るい未来への準備もあり、ここ最近は目の回るような忙しさだったが、俺は全く苦には思っていなかった。

そんな忙しくも幸せで満ちた日々の中、俺は今日もステラ様に昼食を用意し、共に食べ終えた後、再びルードヴィング伯爵邸へと戻り、午後からの仕事もいつものようにこなしていた。
そしてリタ様の午後からのスケジュールを把握し完璧に立ち回る為に、リタ様の午後からの予定表を見た時、俺はある違和感に気が付いた。



「…」



予定表に書かれている学院からの帰宅時間がどうもおかしい。

ロイ殿下に注意されたことによって、リタ様は渋々学院に通っているが、それでも必要最低限だ。
リタ様はいつも午後から学院へ行き、2時間もしないうちにさっさと帰ってくる。
授業も受けず、何もせず、本当にただ気まぐれに学院に顔を出しているだけなのだ。




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