悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




「第一部隊の方々がいませんね。伯爵様とどこかへ出掛けているのでしょうか」



いつもならいるはずの第一部隊の騎士たちが全員いない理由を何となく若い騎士に聞いてみる。

ルードヴィングの第一部隊は精鋭の集まりだ。
何か有事の際に伯爵様と共に動くことが多い。そんな騎士たちが全員丸々いない光景はなかなか見ないので、何かあったのだろうと察せる。



「いえ、伯爵様とではなく、リタ様と出掛けられましたよ。何やらとんでもない犯罪者を捕まえに行くみたいで、第一部隊の力でないと駄目だとか」

「…リタ様と?」



1人の騎士の説明を聞き、俺は表情を曇らせる。

…嫌な予感がする。



「リタ様がどちらに向かわれたか知っている方はいらっしゃいますか?」

「んー。俺は知らないな」

「私も知らないです」

「馬車を使って行かねばならない場所だとは言っていたな」

「馬車庫に行けば行き先くらいはわかるんじゃないかい?」



俺の質問に騎士たちが口々に応えてくれる。
俺は一通り、騎士たちの話を聞くと、軽くお礼を言って、馬車庫へと足早に向かった。




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