悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…教えていただきありがとうございました」
管理人に会釈をして、馬車庫から飛び出す。
ステラ様を早くお助けしなければ。
このままではステラ様が殺されてしまう。
リタ様が今連れているのはルードヴィングの騎士の精鋭たちだ。その精鋭たちを俺1人で相手するのは難しい。
最悪ステラ様と共に殺されるだろう。
俺と共に戦力になり得る存在は今ここにいるのか。
そもそもただの執事である俺に力を貸す者はいるのか。
考えていても仕方ない。
とにかく動かなければステラ様を永遠に失ってしまう。
焦る気持ちを必死に抑えながらも、ルードヴィング邸内へと一度戻り、俺は自室へと向かう。
そこには暗殺に必要な道具がいくつかある。
それを持って俺だけでも行くしかない。
「伯爵、お前が僕に娘だと紹介した娘はリタではなく、影武者だった。そして僕の目を欺き、婚約までさせた。そうだろう?」
聞き覚えのある声が扉の向こうから聞こえてきたので、俺はその場で足を止める。
この優しくも相手に圧を感じさせる声はロイ殿下のものだ。