悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「言い逃れはできないよ?伯爵。それでステラは今どこにいる?」
「…し、知りません」
「知らない?この状況でまだとぼけるのか?」
苦々しい顔でこちらから視線を逸らす伯爵に僕は逃げることは許さない、と強い視線を向ける。
本当に伯爵はステラの居場所を知らないのか。
疑い深く伯爵を観察していると、焦った様子でセスが口を挟んできた。
「伯爵様は本当にステラ様の居場所を知りません。ステラ様は俺が匿っておりましたから」
「場所は?」
セスの言葉にユリウスが反応し、素早くその場から立つ。
「今すぐ教えろ」
冷たく周りを圧倒する雰囲気を放つユリウスにはもう余裕はないようだった。
帝国一の天才と謳われる騎士の本気の殺気はこんなにも痺れ、息をすることすらも苦しくなるとは。
さすがとしか言えないユリウスの迫力だ。
たった数分であったとはいえ、セスからステラの名前が出て今までよくユリウスは耐えたものだ。
きっと今すぐにでもステラの居場所を聞き、駆けつけたい気持ちを必死に抑えていたのだろう。