悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「ステラ様は俺の屋敷にいます。そこにリタ様とルードヴィングの騎士の精鋭たちも向かったと思われます」
「わかった。すぐに向かおう」
「はい、ご案内いたします」
セスとユリウスがこちらの様子など一切伺うことなく、早々にこの部屋から出て行く。
2人が慌ただしくこの部屋から出て行ったことによって、この部屋には僕と伯爵だけが残された。
ユリウスはステラのことになると周りが見えなくなるようだ。
「皇族を欺いたこと、罪のないステラを殺そうとしたこと…、詐称に殺人未遂、罪はまだまだたくさんあるけど、一先ずはこの2つで伯爵を連行しようかな。ピエール」
「はい」
部屋の外へと待機さえておいたピエールの名前を呼ぶとピエールは何人かの屈強な騎士を従えて、この部屋に入ってくる。
「ルードヴィング伯爵を連行して」
「かしこまりました」
そして俺にそう指示されたピエールは騎士たちに視線を送り、俺の指示通り伯爵を捕えさせた。
伯爵は案外あっさりと騎士たちに囲まれながらも連行されていった。
「…さて」
一仕事終えた僕もさっさとこの部屋から出て、馬車へと向かう。
僕だってステラのことが心配だ。
本当はユリウスと同じようにこの部屋から飛び出して、ステラの元まで駆け付けたかったが、伯爵を捕えるという仕事が僕にはあった。
その仕事を放棄する訳にもいかないだろう。
僕は馬車へ向かうまでに適当に使用人たちに声をかけ、セスの屋敷の場所を知る者を見つけると、その者と一緒にセスの屋敷へと向かったのであった。
どうか無事でいて。ステラ。