悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「うさぎさぁん。ボロ雑巾のようなうさぎさぁん。どこにいるのかしらぁ?ここかしらぁ?」



リタの楽しそうな声と共にバァンっ!と大きな発砲音がこの森に響く。
先ほどから逃げても逃げてもこれがどこからか聞こえ、私の恐怖心を煽った。

…最悪だ。

きっとリタに見つかるのも時間の問題だ。
いくら必死に足を動かしても、思うように進めない私がどうやってリタたちから逃げられるというのだ。



「…ぅ、はぁ」



どうせ死ぬのなら最期にユリウスに会いたかった。
何故だかわからないが、私はあの無愛想な男の姿を最期に一目だけでも見たいと思ってしまった。

息切れの中に嗚咽が混じる。
大きな声を出してしまえばリタに見つかる。
だからこそ押し殺すように泣くしかない。

もう足が動かない。

そう思うと同時に私の両膝は力なく、地面へと落ちた。



「…っ」



両足が小刻みに震えており、とてもじゃないが、もう移動することすらままならない。




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