悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
そんな絶望的な状況の中、私の耳に馬の足音が聞こえてきた。
ーーールードヴィングの騎士だ。
リタは私を捕える為に、自分の足で私を追い詰めることを楽しみながらも、確実に捕える方法もきちんと用意していたようだ。
…あのリタが自分の享楽以外のことも考え、先手を打てるとは。
こんな時なのに、はは、と思わず笑ってしまう。
それから馬の足音はどんどん大きくなり、こちらへと近づいてきた。
もうおしまいだ。
そう自分の運命を悟ると私は今まさにこちらに迫ってきた馬の方へと視線を向けた。
「…っ!」
木と木の間から馬に乗って現れた人物に私は驚きで目を見開く。
木々の葉の間から僅かに差し込む太陽の光を吸い込む黒い髪。その髪から覗く切れ長の黄金の瞳が私を捉え、私と同じように目を見開く。