悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
ーーーーユリウスだ。
最期に一目見たいと思った私に神様が幻覚でも見せているのだろうか。
「…ユ」
目の前にいる会いたかった人物の名前を私は呼ぼうとし、やめる。
ユリウスが知っているのは12歳の私であり、今の19歳の私ではない。
きっと私に名前を呼ばれても困惑するだけだ。
「ステラ!」
だが、ユリウスは私の予想とは反して、私の名前を必死に呼び、馬から飛び降りると私を抱きしめた。
私の目の前いっぱいにユリウスのしっかりとした胸板が広がる。それから懐かしいユリウスの香りが鼻へと届いた。
夢ではない、幻覚でもない、本物のユリウスが今、私を抱きしめている。
「…わ、私が、ステラだってわかるの?」
震える声で私はユリウスに聞く。
今の状況が信じられなくてどうしたらいいのかわからない。