悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「当たり前だろう。俺の大切な護衛…いや家族なんだからどんな姿になってもわかる。お前はステラだ」
「…っ」
ユリウスにそう言われて私はやっとユリウスの背中へと手を回す。
そしてぎゅうと力いっぱいユリウスを抱きしめた。
心の奥底が締め付けられるように苦しくて、熱くて、嬉しい。
嬉しくて嬉しくて苦しいなんて自分のことなのに訳がわからない。
ああ、だけど、これだけはわかる。
私はユリウスのことが大切で大切で仕方なかったのだと。
それから私とユリウスはお互いの存在を確かめ合うようにしばらく抱き合った。
*****
ユリウスとしばらく抱き合った後、私はユリウスと共に馬に乗り、セスの屋敷へと移動した。
以前の私とユリウスは子どもと大人という関係だったので、ユリウスとどんなに密着してもあまりドキドキすることはなかったが、今の私は大人なので、馬に乗っている時、すぐ後ろにユリウスを感じることがどうも落ち着かず、終始むず痒かった。
そしてなかなか慣れないむず痒さを感じながらも私はユリウスからことの経緯を聞いた。