悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
…何でそんな目を私に向けるの?
ロイの変な視線に疑問を持ちながらも、ロイの次の言葉を待っていると、ロイはその形の良い口をゆっくりと開いた。
「君があの全てを完璧にこなし、僕の心を掴んだリタだったんだね」
「…え」
ロイの言葉に私は固まる。
前半はユリウスから聞いていたので知っていた。
ロイは私の正体、事情を全て知っているのだと。
だが、後半は知らない。
ロイの心を掴んだ?
あの表情にあの甘い声。
どう考えても〝僕の心を掴んだ〟とは好きにさせた、と言っているようにしか聞こえない。
リタ代役時、ロイに面白がられている、または退屈しのぎになると気に入られている自覚はあったが、そこに〝好き〟だという感情は全くないと思っていた。
そもそも今目の前にいるロイが誰かを愛せるとも思っていなかった。
この男にはまるで心がないように思っていたからだ。
「心を掴んだって…。興味を持ったとかですよね?」
「僕の気持ちをわかっていて確認するだなんてステラもなかなか意地悪だね?」
勘違いであってくれ、と祈りながらロイに確認した結果、私は撃沈した。
わざとらしく恥ずかしそうに甘く笑うロイにどうやら嘘はないらしい。