悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
終章 ステラの新たな人生

1.朝の目覚め





暖かく心地いい布団を感じながら、ふわふわのマットレスに身を沈め、私は今日も眠る。
全部が全部ふわふわで最高だ。

…最高なはずなのに。

どうしてだかとても苦しい。
前から暖かくて硬い何かに締め付けられているようなそんな感覚がする。



「…ゔ」



あまりにも息苦しいので、目の前の何かをぐっと押し、何とか離れようとしたが、それはびくともしない。

…何なんだよ、もう。

さすがにそこまでしているともう目が覚めてしまった。
そして目が覚めて私はすぐに自分の置かれている状況を把握した。



「…」



今日もか。

無言で私を力強く抱きしめる相手を睨む。
だがその相手、ユリウスは未だにすやすやと気持ちよさそうに眠っており、何の反応も示さない。

…本当、安眠妨害だ。

窓から差し込む太陽の光を吸い込む黒髪から覗く、美しく整った顔をまじまじと見つめる。
この美しい男、ユリウスは今日も何故か逃走前の12歳の私と同じように19歳の私とも一緒に寝ていた。




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