悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
リタに襲われ、ユリウスたちに助けられてからもう1ヶ月が経った。
あれからリタとルードヴィング伯爵は様々な罪で帝国地下牢へと投獄された。
そのおかげで私の命を狙う者はもういなくなり、帝国外へと逃げる必要もなくなったので、私はここミラディア帝国に残ることを決めた。
犯罪ギリギリ、ほぼアウトな方法で外へ出るよりも普通に帝国内で生活した方がいいからだ。
そして帝国内で暮らすことを決めた私が新たに生活する場所に選んだのは、ここフランドル邸だった。
…まあ、選んだというより、選ばざるを得なかったって感じだけど。
今の私の名前はステラ・フランドルだ。
少し前までの私は孤児で戸籍もなかったので、名字なんて立派なものはもちろんなかった。
だが、私が失踪中の間、何とユリウスは私をフランドルの家門へと入れるべく、素性不明の少女をフランドル籍に入れてしまったのだ。
と、いう訳で私は今、フランドルの娘であり、しかもユリウスが私の正体を知る前に私をフランドルに入れてしまったものだから、私は戸籍上はユリウスの妹ということになっている。
ユリウスは18歳で私は19歳なのに。
そんな一応私の兄になってしまったユリウスだが、ユリウスは全く私にとって兄らしくなかった。
その兄らしくない行動の一つがこれだ。
ユリウスは何故か兄のくせに私と同じベッドで一緒に寝たがった。
それも私がフランドル邸へと帰ったその日からだ。
最初は当然のように私と寝ようとベッドに入ってきたユリウスを私は止め、ベッドから追い出そうとした。
だが、ユリウスは無表情ながらもその黄金の瞳に悲しみを滲ませ、「何故だ?今まで一緒に寝ていただろう?」と言ってきたのだ。