悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
相手は19歳の私だ。12歳の私ではない。そんなことをするような相手ではないのだ。
それなのにユリウスからそんな言動をされて、私はわけがわからなかったが、どうしてもユリウスのことを突っぱねることができなかった。
なので、私は今もこの何を考えているのかよくわからないユリウスと共に、私の部屋で眠っている。
そして毎回毎回きつく抱き締められて目を覚ます。
「…ユリウス、起きて」
そろそろ起きる時間でもあるので、ユリウスにそう声をかけてみる。
するとユリウスはその閉ざされた瞼を少しだけ震わせた。
「…ステラ」
ゆっくりと開けられたユリウスの瞼から黄金の瞳が現れる。その瞳は最初こそどこか眠たそうだったが、すぐにその眠気はなくなり、愛おしそうに私を見た。
「おはよう、ステラ」
「…おはよう、ユリウス」
相変わらず冷たい表情のユリウスが私を至近距離で見つめ、優しく私の頭に触れる。
ユリウスにとって私は19歳の大人ではなく、12歳の子どもなのだろうか。
「…とりあえず起きたいから離れてくれる?ユリウス」
私は朝の支度を始める為にそう言って、目の前の分厚い胸を軽く押す。
だが、ユリウスは全く動こうとはせず、何故か不満げな瞳を私に向けてきた。