悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




「朝起こしに行くのも私の役目です!セス様がしなければならないことはステラ様の予定調整!それから備品管理!その他もろもろステラ様が何不自由なく生活できるように基盤を整えることです!ステラ様の身の回りのお世話をすることではございません!」



そしてメアリーはぷくっと頬を膨らませ、深緑の瞳に怒りを宿してセスに不満をぶちまけた。
だがセスはそんなことをされても特に気にしている様子はなく、「わかっています。全てやり終えた上でここにいるのです」と真顔でメアリーに言っていた。

さすがリタの執事を何年もしてきただけあって、セスには責められる要素が一つもなく、完璧だ。
なので、メアリーはいつもこういう展開になるとセスに何も言えなくなっていた。



「ステラ様!おはようございます!身支度は全てこのメアリーにお任せくださいね!」



セスに何も言えなくなってしまったメアリーが、もうセスなど無視して私の手を取り、太陽の如く明るく私に笑う。

メアリーは12歳ではない、19歳の私にもこんな感じで変わらず、過保護のままだった。
いや、メアリーだけではない。ここフランドル邸にいる者たちは皆、変わらず、以前の私と同じように19歳の私とも接してくれている。
きっとユリウスや公爵夫妻がいろいろと手を回してくれた結果なのだろう。



「メアリー、いつもありがとう」

「いえいえとんでもございません!私はステラ様の専属メイドなのですから!」



私に感謝の気持ちを伝えられて、メアリーは誇らしげに胸を張る。
相変わらず可愛らしい。まるでご主人様に褒められて喜んでいる小型犬のようだ。



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