悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
2.新たな関係と愛情
「今日のステラのコーデとっても素敵よ。ユリウスとダリルの瞳と同じ色のコーデね」
広く長い机を挟み、向こう側に座る公爵夫人が私に優しい眼差しを向ける。
それから夫人は自身がダリルと呼んだ隣に座る公爵の方へ視線を向け、「とても可愛らしいわよね?あなた?」と同意を求めていた。
公爵はそんな夫人を見て、ユリウスとよく似た冷たい表情で、ただただ静かに頷いた。
ここはフランドル邸内の食堂。
私は今、いつものように私の隣に座るユリウスと、机を挟んで向こう側にいる公爵夫妻と一緒に朝食を食べていた。
ちなみに今の私の服装は夫人が気がついた通り、ユリウスと公爵の瞳と同じ色、つまり黄色のワンピースを着ている。今朝ユリウスがメアリーに要望した通りの格好だ。
さらに髪型もユリウスの要望通り、鎖骨より少し長い栗色の髪をゆるく巻き、ポニーテールにしていた。
特にこれがいい、という希望もなかったので、今日の私は全身ユリウスの希望通りになっていた。
「今日はロイ殿下とお会いする約束があるのでしょう?一体何をする予定なのかしら?お母様気になるわ~。湖で船上デート?お忍びで街に行って劇場デート?あの美しい中庭でお茶会デートも捨てがたいわねぇ」
「…中庭でお茶会をすると聞いております」
「お茶会!素敵ねぇ。今日のステラはまるでひまわりの妖精のようだから、中庭に現れたアナタを見てきっと殿下も驚きになるわね」
「は、はは。そうですかね」
「そうよぉ」
何故か私以上に盛り上がり、当事者意識のある夫人に私は何とか笑顔を浮かべる。
ただロイと会うだけの予定なのだが、夫人の中では、私とロイがデートをすることになっているようだ。