悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「お母様。ステラは別にデートに行くわけではありません。ただ、殿下がステラに会いたいとおっしゃるので会いに行くだけです。そこに特別なものはございません」
「そうだぞ、ルーシー。ただステラは皇太子殿下直々に宮殿に呼ばれているだけだ」
「あら?でもステラと殿下は婚約している仲じゃない?2人で会うということはデートということでしょう?何か間違っているかしら?」
「「間違っている(ます)」」
公爵からルーシーと呼ばれた夫人の言葉にフランドルの男たちは似たような冷たい顔で不愉快そうに夫人の言葉を否定する。
それでも夫人はあっけらかんとしており、「そうかしら~?」といつものように微笑んでいた。
私、ステラ・フランドルは今夫人が言った通り、何故がロイの婚約者となっている。
リタになりすました私とロイが正式に婚約式で婚約していたからだ。
ステラとしてではなく、リタとして結んだものだったので、あの婚約は無効だと思われたが、ロイも皇帝陛下もそれを何故か無効とはせず、有効だと主張してしまった。
さらに私が養子縁組でフランドルの娘、つまり公爵令嬢になってしまっていたことも大きかった。
ただの孤児ではなく、身分のしっかりとした公爵令嬢で、おまけにリタ代役時に身につけた教養まである。
今の私はロイの婚約者として適役すぎたのだ。
しかし私はこの婚約にあまり乗り気ではなかった。
一応書類上は公爵令嬢で、教養まである私かもしれないが、元はどこの馬の骨かもわからない孤児なのだ。
そんな私が未来の皇后など恐れ多すぎる。