悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「その猫はどこで見たの?今度一緒に探しに行こうよ」
「え、あ、確か宮殿の近くだったような…」
「そうなの?じゃあいつでも探しに行けるね?いつにする?」
「そう、ですね。急ですので、ちょっと予定を見てみないと何とも言えないですね」
こちらとの距離を詰め、ついでにまた会う約束まで取り付けようとするロイを、私はそれはもう笑顔でやんわりと断る。
だが、これも毎回の流れなので、ロイは「僕の婚約者様はいつもそれだね。なら早く君の予定を教えてね?僕が君の予定に全部合わせるから」と言ってきた。
ロイはこの帝国の皇太子だ。私に予定を合わせられるわけがないほど忙しい人なのだ。
それなのに毎回ロイはどんなことがあっても私を優先して、私の予定に本当に合わせてくる。
私も毎回毎回絶対にロイが私と予定を合わせられない日を調べて、ロイと会う日を選んでいるつもりだが、それはいつも全く意味をなさなかった。
「どうして殿下がここにいらっしゃるのですか」
ユリウスが突然静かにそう言う。
ユリウスの視線の先はもちろんロイで、あろうことか帝国の皇太子を冷たい表情で睨みつけていた。
不敬すぎるぞ、ユリウス。