悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
3.まっすぐな愛
ロイとユリウスと私。
フランドル公爵邸内の中庭で、何故か揃ってしまった私たち3人の空気は殺伐としていた。
気まずすぎる空気の中、どちらかがこの場から離れればよいものを、どちらも何故かこの場から離れようとはせず、小さな言い争いを続けていたので、私は何とか2人の間に入り、その争いを収めた。
その後もこれ以上無用な争いが起きないように、細心の注意を払って、その場をやり過ごした。
そして、現在。
私はロイとの約束通り、ロイと共に宮殿へと向かい、お茶会会場へと続く中庭の綺麗に整備された道を歩いていた。
もちろんロイと一緒に。
「今日のお茶会にはステラの大好きな苺のデザートを用意してあるよ。この前絶賛していたタルトもあるからね」
「え!本当ですか!」
「うん。本当」
ロイの嬉しすぎるお知らせに思わず声が上ずる。
そんな私をロイは12歳の私を見る時と同じように優しく見つめた。
「…んん、楽しみです」
ロイの優しすぎる視線に恥ずかしくなり、私は軽く咳払いをして、平静を装う。
つい、テンションが上がって、子どものような反応をしてしまった。
今の私は12歳の子どもではなく、19歳の大人なのだからちゃんとしないと。
だが、さすがロイ。私が恥ずかしがっていることにもすぐに気がつき、それはそれはもう暖かいが、どこか意地の悪い視線を私に向けてきた。
何も言われなくてもわかる。
これは私のリアクションを面白がっている視線だ。