悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「今日のステラはまるでひまわりの妖精だね。子どもの君と初めて出会ったあの時を思い出すなぁ」
中庭を歩く私をまじまじと見て、ロイが感慨深そうにそのルビー色の瞳を細める。
丁度中庭に咲いている花たちも黄色系統の花が多かったのでそう見えたのだろう。
夫人の言う通りの反応をするロイに私はおかしくて笑ってしまう。
そんな私を見てロイは不思議そうに「どうしたの?」と聞いてきたが、私は「いえ、何でもないです」と特に詳細を話そうとはしなかった。
「今日のステラもとても素敵だよ。だけどその色はユリウスの瞳の色だね。婚約者との逢瀬だというのに他の男の色を身にまとってきたのかい?ひどい婚約者様だね、ステラは」
「…え。いえ、これは…」
そんな意図あるはずがないだろう。
柔らかく優しげだが、どこか不満そうに私を見るロイにすぐに言葉が出てこない。
まさかそんなところに目を付けて文句を言ってくるとは思いもしなかった。
「…これは私が選んだものではありません。ユリウスが選んだものです。ですから誰かの色をまとっているつもりなんてありません。ただ選ばれたものを着ているだけです」
「ふーん。それはもっとたちが悪いね」
「はい?」
最初こそ、言葉が出なかった私だが、すぐにはっきりと状況を説明して、自分は悪くない、と主張する。
だが、しかし状況を改善しようとしたその主張によって、何故か状況がさらに悪化してしまった。