悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




不満そうだったロイが今度は不機嫌そうにこちらを見ている。
にこやかに笑っているが、目が全く笑っていない。見間違えでなければ、その目はまるで刃物のように鋭い気がする。

わかっていてやるより、わからずにやる方が許されると思っていたんだが、どうやら違うらしい。



「ユリウスが何故自分の瞳の色と同じ色の服をステラに選んだのかわかる?」

「…気分?」

「違うよ。マーキングだよ。僕の元へ行くステラにステラは自分のものだと主張しているんだよ」

「ないない。それはないですよ、ロイ様」



大真面目にユリウスの意図の解説するロイに失笑してしまう。
だが、これに関しては見当違いなことを言っているロイが悪い。

瞳の色と同じ色の服を選ぶ意味なんてもちろん私だって知っている。
しかしあれは恋愛感情のある異性に対してだ。決して仲の良い友人や家族にするものではない。

ユリウスは私と家族なのだ。血は繋がっていないが、兄と妹だ。
そんな私に選んだユリウスの服の意図がマーキングな訳がないのだ。

呆れている私を見てロイは「僕の婚約者様は変なところで鈍感だね」と諦めたように笑っていた。




< 302 / 313 >

この作品をシェア

pagetop