悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「大変名残惜しいのですが、もう時間ですので、私はここでお暇させていただきます」
音もなく私の側にいたロイに内心驚きながらも、少しだけ寂しげな表情を作り、ロイを見つめる。
アナタと離れ難いのですよ、私は。決して今すぐここを離れたい訳ではないのですよ、と言いたげに。
「愛しの僕のステラ。僕も君と離れることが名残惜しいよ。だから馬車まで君を送らせて?」
「…はい、もちろんです」
優しくふわりと笑うロイに私も同じように笑う。
本当は一刻も早く、この心臓の悪い皇太子様から離れたかったが、それはもう諦めることにした。
馬車までの辛抱だ。それにセスもいるし、もうあのような心臓に悪いことは起きないだろう。
こうして側から見れば仲睦まじい私たちとセスは共に馬車の元まで向かうこととなった。
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私が乗る馬車の元へ辿り着くと、そこには何故かユリウスがいた。
「ステラ、待っていたぞ」
相変わらずの冷たい表情でこちらを見つめるユリウスだが、その黄金の瞳は優しい。
そんなユリウスが何故馬車の前で私を待っていたのかよくわからず、私は首を傾げた。
ユリウスとここで待ち合わせをした覚えがないのだ。