悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「ロイ殿下。うちのステラが大変お世話になりました。それでは」
私の隣にいたロイに会釈をして、ユリウスが私の手を引く。
ユリウスに手を引かれたことによって、私はユリウスの元へと移動した…と、思われた。
しかし実際は私の隣にいたロイが、私の空いている方の手を掴み、それを阻止したことによって、私はユリウスの元へと移動できなかった。
右手をユリウス、左手をロイに掴まれ、どちらにも行けれない状態になる。
「婚約者である僕が最後までエスコートするよ。お兄義様」
「…そのように呼ばないでください。俺はアナタの義理の兄になるつもりはありません」
「おかしなことを言うね、ユリウス。僕とステラは結婚するんだよ?ユリウスに拒否権はないよ」
「おかしなことを言っているのは殿下の方です。そもそもその結婚がありえないと言っているのです」
「僕は婚約者なのに?」
「その婚約は無効です」
…また始まった。
2人が顔を合わせればいつもこうだ。
ユリウスは不愉快そうに、ロイは笑顔で互いを睨み合っている。
午前中も見た一触即発な空気に私は頭を抱えた。